参考文献Reference

 本サービスが参考にする文献の一覧です。
 著者にわかりやすく解説をお願いしました。
 みなさまの健康管理にお役立てください。
この論文の筆頭著者である松井太志先生が解説してくださいます。
研究者名 松井 太志(まつい たいし)先生
ご所属 ユニオンツール株式会社 技術本部
ご略歴 2013年 ユニオンツール株式会社 入社
所属学会 日本循環器学会
松井太志先生

心房細動の診断のためのR-R間隔の変動性の分析:新しいアルゴリズム

松井太志 ¹,篠崎亮 ¹,渡邉英一 ²,相澤義房 ³ ¹ ユニオンツール株式会社,² 藤田保健衛生大学,³ 立川メデイカルセンター 【背景】
心房細動(AF : Atrial Fibrillation)はよくある不整脈です.突発的に発症すると脈の乱れ、胸部の不快感、胸の痛み、動悸などの自覚症状を感じることもありますが、自覚しないまま脳梗塞や全身性塞栓症といった合併症を発症することで初めて、AFに罹患していたことが明らかになることもあります.AFは、心電図で診断されますが,AF発症中は心拍が乱れるため,心拍変動からAFを検出する研究が進められてきました.それらの研究によって,心拍からAFを検出する精度は向上しましたが,検出するために数時間から数日必要なケースもあります.一方,医師による触診は10秒程度でもAFを診断できるため,心拍変動によってAFを検出する方法も必要な時間を短縮できる見込みがありました.そこで我々は20拍程度の心拍から心房細動を識別する方法を開発しました。

【方法】
心電図は、心臓が拍動する際に伝達する心電図波形のP波、QRS波、T波からなります。心拍変動は、連続したQRS波の時間間隔の変動のことです。この時間間隔はRRI(R-R Interval)といいます。心拍が規則正しい健常者(正常洞調律:以下NSR)のRRIはほぼ一定ですが、AF患者は心拍が乱れているので、健常者に比べ心拍変動が大きく、従ってRRIは不規則です。この傾向を確かめるために、NSRとAF患者それぞれ4名について、時間的に隣り合うRRIの差ΔRRIと、本研究で新たに導入した値NDR、ΔRRIを時間的に隣り合うRRIの平均で除算した値、とを比較しました。この結果から、連続する20個のNDRが±0.100の範囲外にあるNDRが7個以上存在する場合AF陽性と判定する方法を提案しました。この方法の有効性を、NSR 129名とAF患者108名で検証しました。

【結果】
NSRとAF患者それぞれ4名について、ΔRRIの分布は、NSRの平均±標準偏差は-0.0290±25.02 ms、AF患者が0.2392±369.8 msでした。NDRの分布は、NSRが0.0001±0.0322、AF患者が0.0106±0.2987でした。ΔRRIよりもNDRの方が狭い範囲に分布していたため、NDRをAF検出に利用することとしました。NSRとAF患者それぞれのNDR分布が、(NSRの平均)±0.100(≒NSRの3倍の標準偏差)の外側にある確率を計算すると、NSRが1.104%、AF患者が73.47%でした。そこで、AF由来の不整脈と推定する条件をNDRの絶対値が0.100より大きいときとしました。NSR 129名とAF患者108名の1分間のRRIについて提案した方法を適用した結果、AF検出の感度と特異度は、それぞれ99.08%と100.0%でした。

【考察および結論】
提案した方法は20拍程度の心拍からNSRとAFを高い精度で識別できることを示しました。心室性期外収縮などのAF以外の不整脈が混在すると過剰診断する可能性もありますが、無症状の心房細動や一過性の心房細動を有する心房細動候補者を特定することが臨床的に重要であることが強調されているため、過剰診断の場合も心臓の基礎疾患や新たに発症する心房細動のリスク、その他の不整脈を評価するために、さらなる診察を勧めることができます。この方法は、血圧計など、取得できる心拍が少ない場合でも活用できます。