コラムColumn

健康管理のヒントになることを、各分野の専門家の方々にわかりやすく説明いただくコーナーです。
みなさまの健康管理にお役立ていただければと思います。
 最近スマートウォッチで心電図が記録できるようになったことから、「心房細動(しんぼうさいどう)」という不整脈が注目されています。心房細動は心臓病の一つで、長嶋監督やオシム監督のような脳梗塞の原因となることがあります。
 成人の脈拍は、通常一分間に60回ぐらいで規則正しく打っています。一方、心房細動という不整脈が出ると、脈拍が一分間に100回ぐらいに増えるとともに、バラバラに打つようになります。この場合、半数の人は、「胸がドキドキする」とか、「ざわざわする」と言いますが、残る半数には症状はありません。心房細動の特徴として、一度発生すると、その後、発生回数が増えて慢性化することです。心房細動が出た初期の段階では、自然に正常な脈に戻ることも多いのですが、中には薬を飲んだり、電気ショックを行わないと戻らないものもあります。心房細動は、いつ出るかわからないという不安と、不快な症状をもたらすだけでなく、脳梗塞や心不全につながることがあります。このため、最近は心房細動になった初期の段階でカテーテルアブレーションという手術を行って、慢性化や合併症の予防に努めることが勧められています。図は私が考案した「心房細動ピラミッド」です(1)。これは、心房細動の原因や、日本の予想患者数、そして、将来起こりうる合併症を示したものです。
 2022年に発表された私たちの研究(SCAN-AF)を紹介します(2)。65歳以上で、高血圧や糖尿病などの病気のある1148例に、自動血圧計を貸し出して1日2回、2週間記録してもらいました。この血圧計には脈拍の不整を感知するセンサーが内蔵されており、脈の不整を検出します。次いで、脈拍不整の表示が出た481例にマイビートなどの携帯型心電計を貸し出して1日2回、2週間記録してもらいました。その結果、41例で心房細動と思われる心電図が記録されました。この方たちには、その後、病院で12誘導心電図という正式な心電図を記録してもらい、9例で心房細動の確定診断がつきました。心房細動は65歳以上の方で、高血圧や糖尿病のある場合、あるいは、脳卒中になったことのある方に発生しやすいことが知られております。もし、これらの疾患がある方で数分以上続く動悸を感じたら、マイビートやスマートウォッチで心電図をとってみて、「不規則脈で医師に相談しましょう」 という表示が出るか確認するのが良いでしょう。
図1.心房細動ピラミッド
図1.心房細動ピラミッド
 心房細動の正確な原因は不明ですが、65歳以上の方に発生しやすく、また底辺に示したリスク因子が関連しているとされます。これらのリスク因子を数多く持つほど心房細動になりやすく、また、心不全や脳梗塞になりやすくなります。星印は心房細動と特に関連の強い因子です。若い人では、過労やストレス、アルコールなども原因とされます。過度な運動(自転車競技やトライアスロン、マラソンなど)を長く行うと心房細動が出やすくなりますが、反対に、まったく運動をしない人も出やすくなります。現在、80歳以上では10人に1人が心房細動と考えられています。頂点にあるように心房細動には年次約2-5%の頻度で脳梗塞や全身性塞栓症が合併するとされます。脳梗塞が起きると、ろれつが回らない、麻痺が残るなど、QOL(生活の質)が損なわれます。このため、心房細動の患者さんは、医師の指導のもとで、抗凝固療法(血液サラサラの薬)を行うとともに、症状がつらい場合や心不全がある場合はカテーテルアブレーションも考えてみてはどうでしょう。

参考文献
1. 渡邉英一. 改訂 はじまりは心房細動 -脳梗塞にならないためにー. 東京: ライフメディコム; 2017.
2. Watanabe E, Takahashi N, Aronson R, Ohsawa A, Ishibashi Y, Murakawa Y and Investigators S-A. Systematic screening for atrial fibrillation in patients at
 moderate-to-high risk of stroke- potential to increase the atrial fibrillation detection rate (SCAN-AF). Circ J. 2022. In press.
筆者 渡邉 英一(わたなべ えいいち)先生
ご所属 藤田医科大学ばんたね病院循環器内科 教授
ご略歴 1987年 山形大学医学部卒業
1987年 聖路加国際病院内科
1991年 名古屋大学第一内科
1991年 名古屋大学環境医学研究所循環器部門(大学院)
1995年 ルイジアナ州立大学分子生化学講座
1997年 名古屋第一赤十字病院救急部
1999年 藤田保健衛生大学医学部循環器内科講師
2009年 藤田保健衛生大学医学部循環器内科准教授
2012年 藤田保健衛生大学医学部循環器内科教授
2020年 藤田医科大学ばんたね病院循環器内科教授
所属学会 日本内科学会
日本循環器学会
日本不整脈心電学会(理事)
日本生体医工学会(代議員)
日本心臓病学会
日本心不全学会
Heart Rhythm Society、American Heart Association, European Society of Cardiology (FESC)
取得専門医 日本内科学会認定内科医
日本内科学会認定総合内科専門医
日本循環器学会専門医
日本不整脈学会不整脈専門医
渡邉英一先生